表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

13

ショックで呼吸が乱れ、息苦しさが限界になっててきた頃。
唇が離れ、代わりに腕の中に固く抱き締められた。
呼吸が乱れて噎せ、頭の芯が何も考えられないほど痺れて…動けない。
「…初めてお会いした時から、貴女を…」
そっと、耳元で囁かれ。
でもその言葉は、やはり私の胸に虚しく響く。
「…渡さない」
押し殺した声で呟くその言葉に、昏い帳を降ろしていた私の脳裏に……。
一筋の光が差すように、彼のーーアツシさんの姿が浮かんだ。

彼はいつも……私を側で見守ってくれる。
何も話さなくても、ただ一緒にいるだけでも…それだけで安心出来る。
強くて優しくて。多くを語らず無口なほうだけど。
……決して、冷たいひとじゃない。
「……私、は……」
……私は……そんなあのひとが……好きなんだ……。

…決して…今ここに居るこの人じゃ…ない…!
力を失い、だらりと下がっていた両手に…力が篭もる。
ーーまた、"明日"…。
そう、また明日には……!

「ーーごめんなさい…!」
卿の軍服の胸に両手を押し当て、渾身の力を込めて押し退け。
体が離れた隙に、そのまま逃げようときびすを返した。
ーーけれど。
背後から腕を掴まれた。
「……!」
絶望にも似たような気持ちが、目の前をも真っ暗にする。
「…貴女が…いけないのだ」
その上、胸にずきりと響く。
「ーーっ⁈」
……声も思うように挙げられず。体が言うことを聞かない。

……嫌だ…!怖い……!
震える唇をどうにか強く噛み、息を殺す。

……たすけて、お願い……。
ーー助けて……、アツシさん…!
声にならない声が涙となり、頬を静かに伝い落ちた。
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