表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

5

すっかり夜も更けた、宿の一室で。
遠征任務の疲れを浴場で洗い流して戻った後…ベッドの縁に寄りかかり、ただ物思いに耽っていた。

あの後、どうやって路地を歩いてきたか分からない。
頭の中はずっと、靄がかかったようにぼうっとしている。
その中でも繰り返し思い出すのはーー息が掛かるほど近くで見たーーアツシさんの顔ばかり。
そして、温かな感触の記憶に。指でそっと唇に触れてみる。

ーー思いもよらなかった、彼の唐突な行動。
強く…優しいーー。
彼は…私を…?……ううん、そんな筈ない。……だって私はいつも……。

考えを巡らせようとするも……却って何も浮かばない。
そのうち、遠征の旅で疲れ切っていた体は……自然と全身を包み込むような睡魔に誘われていった。

窓の外から滲む、淡い光に目が覚めた。
深い眠りに落ちながらも、床に座り込んだままの姿勢で眠ってしまい、体が少し痛い。
まだ朝としての時間は早いようで…陽が昇りきらない暗さも混じっている。

今日は任務はお休み。
ーーそして…彼はきっと来ない。
そう思うと、あまり起きて行動する気にはなれず…。
もう一度、ちゃんと寝よう。改めてベッドに横たわった。

まだじんわりと残るけだるい疲れが、私を再び眠りにつかせてくれた。

刺すような光に再び瞼が開き、ゆっくりと身を起こした。
すっかり陽は高く昇り、街の通りは人々の営みで賑わっている。
こんなに長い時間眠って過ごしたのは、初めてかも知れない。
慣れない朝寝に、頭の芯がじんとする。
もう少し、休んでいようか…。…でも、やりたい事もある。
少しふらつきながらもベッドを離れ、部屋を出た。
まずは食事…。
そう思い、宿の外へ向かう。
もう昼も近い。どうせならゆっくり、美味しいものでも食べよう。
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