表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

6

「あら、今日は一人?」
酒場へ入ると、店員のネッティさんにそう訊ねられた。
「…はい…」
「へえ~。…喧嘩でもしたの?」
どことなく感じる寂しさに俯く私に、顔を寄せ声を落としてそっと問いかけてきた。
それに対して、どう答えて良いか分からず…黙ったままただ首を振った。
「…ふうん。ーーまあ、そこ空いてるから座って。新鮮なブドウジュースも出来てるからさ」
いつも通りの、元気な声で。
肩を叩くように触れながら、席を促してくれた。

そう、今日は一人。いつもなら…目の前に彼が居る筈。

大きなこの街で一人で行動するのは初めてで、少し心細い。
でも、来なくて良いと言ったのは私。
…泥と煤で汚れた服のお洗濯もしたかったし、後で繕いものもしようと思っている。
…けれど…。
彼の沈んだ顔を、あれ以上見たくなかったから。
きっと、日が明ければ…疲れが癒えれば…。そう思ってしまったから。

彼は私と違うのに。
…私なんかより遙かに強く…純粋なひと。

…そうは思っても。
”私はただのポーンです”ーーその言葉が引っ掛かる。
ただ付き従うポーン…そんな事を言っていたけれど…。
”私は強くありません”ーーそう言ったその言葉は?

人は、ポーンは感情が希薄だというけれど…とてもそうは思えない。

ーー彼はあの時、とても哀しそうな目をしていたから。

そしてそれが気になる私自身も…もしかして、彼の事を…?
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