表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

5

「お願いが…あります」

顔を背けた方向へ、また彼の目が合わされる。
ーーその瞳は、心の中を見透かすように私を見据えて。
沸々と、鋭く熱い光がたぎってゆく。
「ここで暫く、お待ち頂けますか」
そう言うと、ある方向へ足を向けようとする。

ーーまさか……。

ある予想が浮かび、慌てて彼の片腕を両手で掴んだ。
そう、彼は……城門の方へ向かおうとしている…。

掴んだ私の手に一度目をやり、そしてこちらを振り返る。
「ーー話を…しに行かせて下さい」

”駄目…、やめて…!”
その言葉は、声にはならないけれど…必死に口を動かして訴えかけた。
けれどもとっさに出したその答えは、彼の予想を肯定する結果となってしまった。
「ーー私にも非があるのは解っています。けれど……!」
私の肩のクロークの襟に手を掛け、ぎゅっと掴んで…苦い表情で見詰めている。

…それは今一番、見られたくない場所…。
また涙がこぼれないよう、唇を噛んだ。
手が震え力が抜け、彼の腕を離してしまう。

その途端、彼はきびすを返し…無言で足を進める。

ーー嫌……、やめて……!
例え、隠し切れていないとしても。事実を改めて耳に入れて欲しくなかった。
何とか駆け込んで彼の前に回り込み、立ち塞がった。
「ーーどいて下さい」
”アツシさん…やめて…。お願い……。”
「マスター」
”…お願い…。いや…!”
「………。」
彼は多分、私を押し退けようとした手を、肩を掴む直前で横に逸らし…。
「ーーーっ‼︎」
宙に浮いた手で拳を作り、すぐ側の石壁を勢い良く打ちつけた。
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