表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

9

「…うん、笑った方がかわいい♪ ーーイージスちゃん達の言ってた通り!」
また私に顔を近付けて、ルゥさんがにっこり笑った。
……か、……。
子供の頃以来あまり言われた事のない言葉に、照れてしまう。
それも、こんな綺麗な人に言われると…尚更。

そして彼女は、イージスさんやルインさんとも知り合いなんだ…。
そう思うと、また更に親しみが沸いてくる。

「ーー良かったら、今度の旅にご一緒させて下さい。そう思って会いに来たんです」
ルゥさんが手を差し出してきた。

ーー申し出は有り難くも、少し躊躇してしまう。
今回の任務に発つにあたって、仲間を募る事までは考えられていなかったから…。
向こうからそう言ってくれる事は、本当に嬉しい。
けれど、声の出ないーー意志の疎通の取れない私などと一緒に…。

手を出しあぐねていると、柔らかく暖かい手が私の手をそっと包んだ。
「ーーねえ、覚者様。一緒に頑張りましょう?」

ーー簡潔ながらも、優しさの含まれたその言葉は。じわりと深く、胸に沁み入ってくる。

素直に、とても嬉しかった。
私なんかが、こんなに良い仲間に恵まれていいのかな…。そう引いてしまう気持ちも興るけれど。
なんとか伝わるよう返事をする為に、喉に手を当てて口を動かした。
”ありがとうございます”
ーーただ頷くだけでは、私の現状が伝わらないと思ったから。
それに…一緒に旅をすれば、きっとすぐ分かる事だから…。
「……ん?」
ルゥさんが小首を傾げ、一瞬目をしばたたかせる。

「ーー何か、訳があるようですね…」
ずっと静かに見守っていたハゥルさんが、呟くように口にした。

「ーーマスターは…。ある事情があって声が……。なので今は…」
アツシさんが、さりげなく代弁してくれた。
「え…?」
「…なるほど。そうだったんですか…」
ルゥさんとハゥルさんが、驚いた様子で私とアツシさんの顔を交互に見る。
それを私も見つめ返しながら、状況が分かった上での二人の意志を待った。

やっぱり、こんな頼りない覚者では…一緒に来て貰えないかな…?
きっと、とても良い人達なんだろうけど…。
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