表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

6

ーー自然と、アツシさんとふたり、合流する形になった。

「…マスター。先程は…」
少し掠れたような声が流れてくる。

そっと、彼の腕に触れた。
と、振り向いたその表情が少し曇っていた。
ーー何を言いたいのか、何となく判る。
小さく首を振り、微笑んで見せた。

「ーーありがとうございます…」
やはりまだどこか、申し訳なさそうだった。
…どうして?…だって、あなたは…ただ心配してくれただけ。
ーーもう一度、首を振った。
「マスター…」
彼は困惑を残しながらも、表情を緩めてくれた。

僅かな間だったけど、ちょっと寂しかったから。ーー今はそれが、ただ嬉しかった。


水路の上に架かった橋を、ゆっくりと進む。
徐々に視界に広がる、造りは古くも神秘的な光景に、意識が吸い込まれるように目を奪われる。
ハゥルさんが言っていた、遺跡の名前ーー水神の祭壇。
その名がまさにふさわしいと思える光景だった。
皆の足音と天井から滴る水音しか聞こえない静けさに、つい眼前に広がる光景だけを見て進んでしまっていた。

頭上を渡る何かの音に気付いたのは、もう半ばまで差し掛かっていた時だった。

「ーーマスター!」
アツシさんが振り向きざま、短く叫びながら剣を突き出してきた。
思わず身を屈めたその背中に、何者かの気配が掠めて離れる。

恐る恐る振り向くと……リザードマンの亡骸が背後の床に横たわっていた。
また悪い癖が…。
目の前の事だけに夢中になって、注意を怠っていた。
彼が間一髪助けてくれなかったらーー。
上から突き出された槍に、串刺しにされていたかもしれない。

ーーほんの少しの不注意さが、危機を招くと云うのに。

「お怪我はありませんか?」
やはり、心配した様子で駆け寄るアツシさんに。
……少し跋が悪い気持ちを感じながら、ゆっくり肯いた。
「ーー私も油断していました。申し訳有りません」
注意を受けるどころか、逆に謝られてしまった。
やっぱりこの人は、どこまでも…。
そう思いながら、顔を上げたとき。
彼の後方に鮮やかな光が灯り揺れるのが見えた。

ーーあれは…!
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