表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

8

……でも…、私は……。
胸にじわじわと沸き起こる言葉が、けれど喉に支えて出て来ない。

「私はあなた達を…失くしたくない!ーー諦めないんだからぁっ‼︎ 」
最後のほうの言葉は、もはや叫び声に近かった。

その言葉が、ルゥさんの想いがーー先程までの私の想いに塗り重なるように。
既に冷たく濡れそぼっていた頰に、熱い涙が新たに溢れ流れ落ちた。

ーーありがとう、ルゥさん。
そして……ごめんなさい、アツシさん。
私、まだ…。諦められないみたいです。

本当は、これからもあなたと居たい。
いつまでも……優しく強く抱き締めていて欲しい。
もっと沢山、優しい言葉を囁いて欲しい……。

……あれ……?ごめんなさい。
私、やっぱりわがままばかり……。

ーーでも、それも全部。
あなたと居られなければ、言えないこと。
……だから……。

ーーどうか今、私に出来る精一杯を。

力無く下げていた手を、強く握り。
そして袖で涙を拭った。
ーー今、私が目を逸らしちゃ……逃げちゃいけないんだ。

ともすれば浮かびそうになる泣き言を呑み込むように、ぐっと唇を噛み締めた。

再び袖で涙を拭いた。
目の前では、ルゥさんとアツシさんがまだ互いの剣技を激しくぶつけ合っている。
ただ救いはーーまだお互い、決して相手を傷つけてはいないこと。
でも、このままでは……。

どうすればいいーー?
とにかく、傷つけずに彼を正気に戻す方法は…。

「覚者様、こちらへ」
必死に考えを巡らせ、立ち往生してしまっている私の腕を。
ハゥルさんが端から引いた。
ーーそうだ、この人なら…!

きっと、解決の糸口が見える気がする。
彼に腕を引かれるまま、柱の陰へ一度退いた。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。