表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

10

「ーーあっちに部屋があるんだけどさ。行ってみない?」
ルゥさんが、先程魔物が向かって来た方を指し示す。

少しなだらかに下がった先が、人為的に設けられた空洞のようになっている。
そしてそこは、行き止まりらしき雰囲気を感じる。
一体、何があるんだろう……。
竜に関する資料があるのか、はたまた、更に魔物が待ち構えているのか。
ーーでも、探索に必要な場所ではある筈。

「…行きましょう」
皆慎重に先を窺いながら、その小部屋へ向かった。

恐る恐る踏み入った先には、資料となりそうな物も魔物の姿も無くーーただ部屋の中央に、石板のようなものが据えてあるだけだった。
「ーーこれは…?」
ハゥルさんが歩み寄り、身を屈めて覗き込む。
そのまま凝視して目をゆっくり細め、ふむ、と一言唸った。
「これは……何かの仕掛けですね。周りの床との間に、薄い溝のような隙間があります。ーーおそらく、上に乗れば動くのかと」
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その細かな説明に、今度は何が起こるのかという興味と……やはりどうしても不安を抱いてしまう。
ゆっくり石盤に近寄り、躊躇って一度足を止めた。
「大丈夫。何かあったらすぐ動くから」
ルゥさんが歩み寄って来て正面に立ち、にっこり笑った。アツシさんも、黙って側に寄ってきてくれた。

皆が、周りに居てくれている。……何かあっても、きっと大丈夫……。
自分に言い聞かせるように頷き、そして皆の顔を軽く見回してーー。
石盤にそっと足を掛け、ゆっくりその上に足を揃えて立った。

ーーごとん、と鈍い音と共に。石盤は床と同じ高さまで沈んだ。

一寸の間を置いて、洞内に響き渡るような…けれども静かな動きを感じさせる音が、壁の向こうから聞こえ来る。
「これは……?!」
皆、とっさに身構えて辺りを見回す。
……この音は。
……何か物が動く音と言うよりは……水音?
まるで、海の水が引くような…。
ーー永く海辺の村で育った私だからこそ、そう感じられるのかも知れない。

……この遺跡で、水場と云えば……。
「……上……?」

誰とも無く呟きながら天井に目を遣り、来た路を戻るべく踵を返した。
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