表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

9

ハゥルさんが、神妙な口調で更に続ける。
「ーー先程の…”術”の影響も加味しておられるのではないでしょうか。覚者様の魔法は我々のそれと、少し違う気がします」
指で顎に杖を吐き、俯き加減な目線を他方へ送りながら告げる。
その目には、何が見えているんだろう…。
ーー私にはまだ、皆目見当が付かない。

「強大な魔法はどれも大変な魔力を要し、修得に時間が掛かるものですが…。覚者様の魔法には、魔力だけではない何かが宿り…力を増しておられるのではないでしょうか」

ーーどきりとした。
それはまさに、”祈り”による力では…。
私自身にしか、きっと分からない筈の感覚。
それを鋭い眼力で見極めるハゥルさんの推力に、改めて驚く。
「魔力に加え、思念、霊力、想い…。魔法をただ魔法として終わらせない…不可視ものがあるのではないでしょうか」
「……私にも……よく分かりません。でも…」

戸惑いながらも、しっかりと答え直した。
「ーー私は…強くなりたい。私にも、大切な人を守れるように…」
その言葉に、ハゥルさんは優しく微笑みながら頷いてくれた。
「……そうですか。その想い、きっと実られますよ」
はにかみながら、首を竦めるように礼を返した。
「…ありがとうございます…」

ーーずっと抱いてきた想い。それは間違ってないのだと…確信を持たせてくれるようで。
そしてそれを改めて口に出せた事で、清々しい気分にもなれた。
「ただ、無理はなさいませぬよう。そういった力には……精神に負担を掛けられ、著しく消耗される可能性も考えられます。ーー命取りにもなります」
「ーーはい」
最後の一言に、少し冷やりとする。
けれど何と無くーーその真意は私自身が一番良く解る気がする。
慎重を促すハゥルさんに、その言葉を噛みしめながら頷いた。
想いは大事だけれども……それだけではいけない。
まだまだゆっくり着実に、歩いて行く必要がある。
ーーけれど今回の旅でも、また色々な事を身に付けられるような気がする……。

「マスター?」
すっかり話し込んでいる間に、アツシさんが側へ来ていた。
「はい……、ごめんなさい。行きましょう」

………私はあなたと……これからも。ーーだから、頑張れる。
自然と微笑みかけた私に、彼も一瞬遅れて微笑み返してくれた。
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