表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

12

いつの間にか、足が止まっていたらしい。
はっと我に返るとーーまたもアツシさんの、顔色を伺うような訝しげな視線。
「……やはり……」
「大丈夫です。…ごめんなさい」
何か言おうとした彼の言葉を、なるべくやんわりと遮るように取り繕い。
あまり口にせず歩を進めた。
彼は何も言わず、優しく強く手を握ってくる。
"大丈夫ですか"、と、そっと訊ねるように。
私も黙ってぎゅっと握り返し、返事に代える。

ーーもう一度、互いの指輪が擦れ小さな音を立てた。

水の引いた下層には、また…。
先程まで探索を進めた領域と同じくらい、広々とした空間が拡がっていた。
多分に水気を含んだ地表を、滑らないようにゆっくり踏みしめながら進む。
そして良く見ると壁沿いには、碧々と葉を茂らせた見慣れない植物が生息している。
「ほう、これは……。失礼します」
ハゥルさんが足を止め、屈みながら呟く。
「此処にしか生息しないものですね。少し持ち帰りましょう」
興味深そうに見渡し眺め、手持ちの袋へと採集を始める。
…けれども…。
そんなゆっくりとした間すら与えぬように、その脇からもまた魔物は現れる。

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ハゥルさんの、そして植物の横から、まるで水が湧き出るように剣を携えた人骨の魔物が現れる。
「ハゥル、避けて!」
いつの間にか、という速さで弓を素早く構えたルゥさんの言葉と共に。
ひっきりなしに、次々と何本もの矢が飛ぶ。
勢いよく真っ直ぐ貫く矢にたちまち体を砕かれ、魔物はただ一瞬姿を現しただけで消え失せた。

それでも辺りからはーー。
まるでそれを引き金にするように、またも魔物が群れと成って襲い来る。

「ああ、もう!手厚く歓迎されすぎよ!」
良いながらルゥさんが再び弓を構え、狙いを定める。
私を含めた残りの全員も、それぞれの武器を手に取る。
空間が在る分だけ、魔物が隙間無く現れる…まさにそんな表現が似合うのではないかと思う。
そのくらい、この遺跡では延々と魔物達との戦いが続く。
魔物自体の強さは、こちらの皆との比ではないけれど…。

進む足がその度に止まり、その結果……時間や疲れとの戦いも強いられる。
想像していた以上に、今回の探索には体力と根気が要る……。
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