表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

14

ーー彼の懐から、そっと体が離された。
「……わかりました……。あなたが、どうしてもと言うなら…」
真剣な表情は崩さず、真っ直ぐな視線は繋ぎ留められたまま。
ーー心配されている。
……けれども、意思も尊重してくれている。
「……ありがとう……」
今はそれが……向けられる精一杯の言葉だった。

「セッちゃん、大丈夫?ーー後少しだけ…、ね?」
横からルゥさんも、窘めるようにそう告げる。
「……はい」
短く答え、ゆっくり肯いた。
もう本当に、あと僅かの間を限度にするしかないとーー私も自分自身でよく解る。

「ひとつ……お願いがあります」
ゆっくり歩き出しながら、アツシさんが静かに切り出した。
少し後ろめたい気持ちもあって、私はただ黙って床を見詰め歩きながらーー次の言葉を待つ。

「此処から帰ったら……どうかゆっくり休養なさって下さい。暫くあまり無理なさらないよう……、その……」
足音だけが響く、一瞬の間。
真っ直ぐ前を見ながらも……彼の目が、少し泳いでいる。
「ーー側で……見ていますから」

どきりとして、一瞬、答えられず……。
でも、徐々に……勝手に顔が綻んでしまう。
「……はい」

ーーそっと、彼の肩に身を寄せた。
彼の左腕に回した私の手に、彼のもう片方の手が重なる。
その上から軽く握られ、その温もりに更に私ももう一方の手を重ねた。

此処から、帰ったら。
彼といつでも、一緒に居られるんだ……。
辛い探索の中にも、新たな楽しみが出来た気がした。
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