表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

3

ーー息を呑んだ。
そのまま、悲鳴も挙げたかも知れない。

石造りの床に、所々が欠けた"人"らしきものの体と………。
その辺り一面に、赤黒い染みが拡がっていた。

頭から急速に血の気が引き、体がぐらりと揺れる。
……私の足を滑らせたものは……。
床に拡がりそのままぺたりと貼り付くように、既に乾き始めた血液だったーー。
そしてその元である人体ーーおそらく神官のものーーには、四肢と頭が無い。それらは少し離れて、まるで引き裂いて散らしたぼろ布のように落ちている。

……まさかこんな事に……。

あまり、見ていたくない光景。でも目が釘付けに……。
とても立っていられず、アツシさんの胸に縋り付いて体を支えた。
「大丈夫ですか…?」
ーー震えながら、ただ頷いた。

ハゥルさんが、体を屈ませて注視する。
「……これは、此処へ踏み入った頃には………。ーーきっと既に手遅れでしたね」
静かに、けれど決して冷ややかではない口調で呟く。
恐怖と驚きから、まるで半ば五感が遠のいていて……少し離れた場所で見聞きしているように感じる。
けれどその中でも耳に入ってくる物音と呻き声、そして伝わってくる振動でそれらは一気に引き戻される。
「ーー何か……来る!」
ルゥさんが広間の奥を見遣り、腰の短剣に手を掛け身構えた。

私達も皆ーー気持ちは完全に切り替わらないものの、そちらへ注意を向けた。
暗闇の奥からのそりと姿を現したのは…、一つ目の巨人。
その大きな目が、私達を遙か上から見下ろしている。
顔を仰げば天井の見える今この場に、その大きな体格は見合わない。
こんな狭い場所で……!
頑強な体躯から繰り出される棍棒での一撃は、身に受ければきっとひとたまりも…。

ーーそうか、あの魔物が…!

きっと、調査に入った神官は……。
やるせなさを感じ、ゆっくりと震える拳を握った。

魔物がゆっくりと近付く中、ルゥさんとハゥルさんがいち早く武器を構え、対峙した。
「アツシさん。セッちゃんを!」
弓を構えながら声だけでそう促す。同時に、ハゥルさんは魔法の詠唱に入っている。
「マスター、こちらへ!」
何を言う間もなく、柱の陰の方へと腕を引かれた。
そこからも、魔物の前に二人が立ちはだかっているのが見える。
きっと引けは取らない。むしろ…。

ーーでも、どこか……腑に落ちなかった。
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