表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

2

"…天地を司る神々よ…八百万の精霊よ…!"

ーー口で呪文は詠唱しない。
大きく腕を動かしながら、頭の中で詞を紡ぐ。
あの竜には……どんな魔法なら…?
ーー村を襲った赤い竜とは違う。
そしてさっきは、雷の魔法を使おうとしていた。
効果的な方法を探し、考えを巡らせてはみるものの……。
圧倒的に力の差がある竜を相手に、まだ魔法にそれほど長けていない私が考えても仕方がない。

私に出来る、せめてもの強力な魔法は……炎の魔法。


『ほう……炎の魔法か。示して見せよ、覚者ーー』
竜の手中にも、同じ色の光が輝き始める。
ーーやはり……!
同じ魔法でも、きっと向こうの方が威力は……。
……でも……!

「ルゥさん、ハゥルさん!…お願いします!」
祈りの詞と動きは止めない。竜から視線も外さない。
絶対に……負けたくない。
ーー負けない!!

……炎の弾……、足りない。炎の壁……、まだ足りない。
ーーもっと…。もっと、強い力を…!
ただの"魔法"じゃない、"祈り"の力を今こそ込めて…。

ーーその身に降り注ぐ程の炎を……!

「大丈夫!ーー任せな…さいっ、と!」
さすが、既に矢をつがえていたらしい。
ルゥさんの弓から放たれた何本もの矢が、竜の腕に立て続けに突き刺さる。
止むことない矢の群が風を切り、唸りを挙げて側を通り過ぎていく。
彼女自身、矢を放ちながら竜との距離を詰め……。
徐々に、前を向いたままの私の視界の隅に、その姿を現し始める。
軽々と、でも力強い動きを見せるルゥさんの、そのいつもと変わらず頼もしい姿に少し安心する。

「ーー私の魔法を重ねます」
落ち着いたハゥルさんの声が、背中をそっと押すように届く。
続いて、今まで聞いたことのない魔法の詠唱が耳に入ってくる。
その呪文のイメージに意識を重ねるように、私も紡ぐべき詞を思い浮かべながら紡いでゆく。

"…炎の精霊…我に邪を打ち払えし力を…!其の力で邪を祓いたまえ…!"
ーー今、私に込められる想いと、祈りの力を全て…!

ーー詞をほぼ紡ぎ終える頃、竜の短い呻きが響いた。


私の中で、不安の緩みを感じ…更に"祈り"の術を続ける。
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