表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

3

竜の魔法は止まった。けれど…。
『小賢しい……!』

大きく息を吸い込んだ竜の口が、大きく開き……。輝く霧のようなものが、勢い良く吐き出された。
…あれは…氷の霧…?!
大きな口から吐き出されるその量は、やはりかなりのもので……。
少し間合いを開けているはずの身の回りにも、冷たい空気が急速に押し寄せてくる。
ーーこのままでは…!

思わず、詞と身振りを止めて身構えそうになったーーその時。
「ーーさせない…!」
低く噛みしめるような声と共に、一陣の風が側を駆け抜けた。

霧の中にうっすら見える、掻き分けるように進むその影はーー?!

「………!」
ーーアツシさん……?!

一度は去った危機を思い浮かべ、また胸に不安が沸き上がる。
ーーしかも、今度は…!

「……や……」
「ーー大丈夫です!彼を信じて!」
思わず声を挙げそうになったその時、すかさずハゥルさんの檄が飛んだ。
不安で泣きたい気持ちを堪えながら、その力強い声に、そして皆の気持ちに支えられるように……。

ーーそして、目の前で飛び込んで行った彼の無事を諦めず願いながら…。

"祈り"を重ねている間は、自然と体が誘われるように動く。まるで、舞うように。
そして全身全霊の力を込め、これまで以上の力を願った今……。
見えない手で押し上げられるように、包まれるようにーー体が宙に浮いた。

私の想い、そして皆の想いも共に込めてーーこの術に、全て託して。
打ち克ってみせる。皆で必ず、此処から帰る……!
全霊を賭けて、祈り……そして願う。
「ーーお願い……!」

体に宿った、何かの力が放出されるような感覚と共に。
ーー再び、地に足がついた。

ひと通り術を終えたからと言って、まだ気は抜けない。
初めて遣った大懸かりな技のその威力を…未だ自分自身も知らない。
ーー技の現出まで、少し間がある…?ならば…!
今度は"祈り"の術を交えず、準備の短い魔法を紡ぐ。
隙無く、少しでも足止めを…。
あの竜の、成し得る全ての攻撃を注ぐ為に。

ーーアツシさんにもう、苦しい思いはさせない。
ルゥさんやハゥルさんも、共に力を尽くし助けてくれている。
……私だって……。

何度でも魔法を使い続ける。何度でも…!
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