表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

8

ひとり歩く道中、狼の群にも出くわした。
低い唸り声を上げ、じりじりと囲んでくる間にも……。
ただ杖を振り、
「ーー炎の祓いを…!」
軽く念じ祈れば、簡単な炎の魔法と同じ術が使えた。
……これも……。
あの竜が施した術のおかげ、なのだろうか…?

ただ、眼前の狼達が倒れ伏すのを静かに眺めながら。
…杖を納め、また黙って歩き出す。
後ろから、人に声を掛けられた気がした。
…周りに誰か居たのだろうか?

ーーそう、例え私でなくても。
覚者になれる者は、他にもきっと沢山居る……。

今まで、此処まで進んでこられたのは…アツシさんをはじめ、暖かく頼りになる仲間のおかげ…。
ーー私には大した力もない。

……どうして私が、覚者になってしまったんだろう。
ただ、偶然の巡り合わせ…?
ーーそれとも。
私にも自覚のない、過去からの……?
あの日、村を襲った竜に立ち向かいなどせず、もしただ逃げていたら…?

ひとりで居ると、今まで知らずに溜め込んできた想いがーー次々とこみ上げてくる。

ーー私は此れから……どうしたいんだろう。

ただ黙々と、その中でずっと思いを巡らせながら歩いて。
ーーやがて、日が暮れかかる頃。
懐かしいカサディスの村は、もう眼前に近付いていた。

……もうすぐ……帰れる。
ただ平穏な日々を過ごしていた、静かな村へ。
また、よく気の知れた皆のもとでーー穏やかに毎日暮らすのもいい。

今までも、覚者として旅していた人々の中にも……。
こうして旅を辞めた者も、きっと居るだろう。
私もただ……、その中の一人になればいいだけのこと。

ーーそうすれば、きっと。
これ以上、私の為に誰も巻き込まなくていい。
そう、誰も……。
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